NPO法人 ヒューマン政経フォーラム

4/20(土)講演会

(2019年5月7日)

「スマホと、カラダ・学力・認知症-その使い方、大丈夫?-」

講師/前田由美子 (当法人理事 共愛学園前橋国際大学研究員) 

日時:2019 年 4 月 20日(土)14時40分

場 所 : 高崎市総合福祉センター3F 会議室4 (高崎市末広町115-1)


—要旨— 前田由美子

とても便利なスマホ。生活の一部に入り込んで、その操作に多くの時間が使われている。

しかし、一方で人の体、たとえば脳に影響があると言われるようになってきた。どのような影響なのか。新しい研究からわかってきたことを取り上げ、考えてみたい。

1.医療機関の風景の変化

「ネット依存専門外来」や「物忘れ外来」に、スマホ利用患者が来る。医療専門家によれば、子どもや若者が通院する姿は従来からあったが、ここ数年は50代まで含めた働き盛りの患者が増加している。子どもや若者だけでなく、親世代も患者になっているという変化がある。なぜ、そのような現象がおこっているのか。理由として考えられるのは、現実生活(社会不安)の問題や人間関係問題からの逃避、安心できる「居場所」の現実生活における欠如など。これら複雑な状況が問題の背景にある。

2.疾病に定義

日本では「スマホ依存」と言われるが、この状態をWHOが疾病分類に入れることになった。「ゲーム障害」、「その他の嗜癖行動による障害」がそれ。

スマホが手離せなくて生活に支障が出ているなら、病気を視野に入れて対応(治療)する必要があるかもしれない。今後は、そのような認識が必要になる。「意志が弱いからやめられない」は従来型の誤解。

3.脳の問題

専門家によれば、スマホの長時間利用は脳の前頭前野に問題をひき起こすことがわかってきた。前頭前野の白質(神経細胞)に機能低下がおこり、理性的に行動できなくなったり、物忘れ(認知症的?)や記憶力の低下がおこる。子どもには学力の低下として表れている。すぐイライラする、記憶力がなくなる、衝動的な行動が抑えられない等が指摘されている。子どもの場合は、前頭前野の発達の途中なので、大人よりも依存傾向が強い。治療はより長期化することがある。

4.対処

スマホを手にしない時間を設けることが良いといわれるが、それが実現できない場合は、専門家の提供する情報や相談を利用したり、受診を考えてみる。デジタル・モード・ネットワークという状態をつくると、脳が疲れて機能しない状態から回復すると言われている。これは何もせず、脳を休ませること。

また、「背景」で指摘された問題を解決すると、スマホに逃避していた生活から、リアルな生活に戻る可能性が高くなる。

 

スマホが人間の体(脳)にどのような深刻な影響を及ぼすのか、その研究は現在進行中である。スマホを手放せない生活を今しているなら、「実験台」になっているリスクがある。悪影響により病気になった場合、治療という手段はあるが、完治の保証はまだない。自分を、家族を、みんなをどうまもるのか、考えるときになっている。